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管理はつらいよ/入居率40%、築年数の古い賃貸マンションを3年かけて満室稼働まで立て直した管理事例

管理に関するあれこれ

田中 康寛

筆者 田中 康寛

不動産キャリア25年

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管理はつらいよ


入居率40%、築年数の古い賃貸マンションを3年かけて満室稼働まで立て直した管理事例


賃貸マンションの管理というと、家賃を集金して、空室が出たら募集して、設備の不具合があれば対応する。
そんなイメージを持たれる方も多いかもしれません。


もちろんそれも管理の一部ですが、実際にはもっと深く、もっと難しい場面があります。

特に、築年数が古く、長年手が入っていない物件や、空室が増え続けている物件を引き継ぐときは、単純な「管理」ではなく、立て直しに近い仕事になることもあります。


今回は、入居率40%の築年数が古い賃貸マンションの管理を引き継ぎ、3年かけて最終的に満室稼働まで改善できた事例をご紹介します。

最初に現場を見たときの率直な感想は、
「これは、ただ管理しているだけでは絶対に改善しない」
というものでした。

築年数が古いことで、設備面や見た目の印象でも新しい物件に負けやすい。
空室が増えても、そのまま。
家賃収入は減っていくのに、出ていく固定費はほとんど変わらない。
オーナー様自身も、半ば諦めてしまっている状態でした。

ですが、こうした物件でも、やり方次第で流れを変えられることがあります。
そして何より大事なのは、古い物件の立て直しは、一瞬では変わらないということです。
今回も、思いつきで何か一つを変えてすぐに満室になったわけではなく、3年という時間をかけて、一つひとつ手を打ちながら改善を積み重ねた結果、ようやく安定して100%稼働するところまで持っていくことができました。

ご相談のきっかけは「入居率40%のマンション管理を引き継いだこと」

今回のスタートは、すでに厳しい数字が出ている物件でした。


入居率は40%

つまり、10室あれば4室しか埋まっていないような状態です。

しかも、この物件は築年数がかなり古いマンションでした。
築浅物件のように、最低限の募集だけで決まる状況ではありません。
古い物件は、それだけで選ばれにくくなりやすく、
「家賃を下げれば決まる」という単純な話でもないことが多いです。

賃貸物件の経営において、ここまで空室率が高いと、オーナー様にとっての心理的負担はかなり大きくなります。
毎月の収入は限られているのに、建物を維持するための支出は続きます。
電気代、共用部の維持費、設備関連の費用、清掃、修繕、税金など、物件を持っている限り固定的にかかるお金は少なくありません。

しかも、今回の物件は、ただ空室が多いだけではありませんでした。
現場を見て感じたのは、築年数が古いにもかかわらず、ほとんど改善の手が入っておらず、空いていくのを待っているだけのような放置状態だったということです。


空室が出る。
でも、しっかり改善されない。
募集条件も見直されない。
物件の魅力づけもされない。
その結果、さらに決まりにくくなり、また空いていく。

まさに負のループでした。

一番の問題は「収入だけ減って、費用は減らない」こと

今回の物件で特に厳しかったのは、
家賃収入が減っているのに、出ていく費用はほとんど変わらない
という点でした。


賃貸経営では、入居率が落ちれば当然収入は減ります。
ですが、建物を維持するための費用は、入居率が落ちたからといって比例して減るわけではありません。

むしろ、築年数の古い物件ほど維持管理の難しさが増すことがあります。
古い設備、古い間取り、時代に合わなくなった仕様。
そうしたものが積み重なると、空室が増えるだけでなく、改善のために必要な手当ても増えていきます。

オーナー様も、長くこの状態を見てこられたことで、
「もう仕方がない」
という空気になっておられました。

ここで大事なのは、単純に「築年数が古いから仕方ない」と片づけないことです。
確かに不利な面はあります。

でも、古い物件でも、やり方によっては十分に競争力を持たせることができます。

まず行ったのは、空室のリフォーム費用と賃料設定の見直し

立て直しの第一歩として行ったのは、空室の現状把握と、改善後の収支の見通しを立てることでした。


1. 空室のリフォーム費用の見積もりと、リフォーム後の賃料設定

空室対策でありがちなのは、全部きれいにしてから募集しようとすることです。
もちろん、部屋がきれいになれば印象は良くなります。
ただ、築年数の古い物件ほど、全部を一気に直そうとすると費用が膨らみやすいという問題があります。

今回の物件でも、各部屋の状態にはかなり差がありました。
そこで、まず各空室について

  • どれくらいのリフォーム費用がかかるのか
  • 改善後にどのくらいの賃料で募集できるのか
  • その投資が回収可能なのか
    を一つずつ見ていきました。

そして、費用対効果が取れる部屋から優先してリフォームし、客付けするという進め方を取りました。

これは、築年数が古い物件を立て直すうえで非常に重要な考え方です。
古いからこそ、全部に同じだけお金をかけるのではなく、
どこに投資すれば結果につながるかを見極めることが必要になります。

また、この段階でも、すぐに結果が出たわけではありません。
一部屋決まって、また次の一部屋を整えていく。
そんな地道な積み重ねを繰り返しながら、少しずつ空室率を改善していきました。

採算が取れない部屋は、別のやり方で収益化した

ただ、空室の中には、全面的に手を入れないと募集が難しい部屋もありました。
しかも、そのリフォーム費用をオーナー様が負担しても、回収に時間がかかりすぎるものもあったのです。

そこで取ったのが、次の方法でした。


2. 全面的なリフォームが必要で採算が取れない部屋は、現状のままサブリース

これはかなり大きなポイントでした。

通常なら「古い部屋は直してから貸す」という発想になりがちです。
ですが、築年数の古い物件では、その考え方だけで進めると、資金だけが先に出ていってしまうことがあります。

そこで今回は、リフォームは借主負担という条件で、現状のままサブリースする形を取りました。
つまり、オーナー様が先に多額の改装費を出さなくても、部屋に価値を見出して使ってくれる借主とのマッチングを目指したわけです。

このやり方により、
通常なら「費用をかけないと動かない古い部屋」を、
大きな初期負担なしで収益化する道ができました。

結果として、現況の収入は固定費を大幅に上回る水準まで改善できました。
これは立て直しの中で非常に大きな意味を持ちます。
なぜなら、赤字を止めることができれば、その後の改善策をより前向きに打てるようになるからです。

設備投資は「最後」ではなく「タイミングを見て打つ」

こうして、まずは知恵と工夫で収入を立て直し、物件全体の流れを変えていきました。
そして、その後に行ったのが、必要な設備投資です。


3. 給水タンクを電動ポンプへ変更


4. エレベーターの設置

ここが今回の事例の大きなポイントのひとつです。

築年数が古い物件では、どうしても「古いから仕方ない」と扱われがちです。
ですが、古い物件でも、設備の改善や使い方の見直しによって、まだまだ価値を引き上げることができます。

今回の物件では、建ぺい率・容積率に少し余裕があったため、エレベーターの設置が実現できました。
また、給水設備についても見直しを行い、給水タンクを電動ポンプへ変更しました。


こうした改善は、築古物件にとって特に意味があります。
新しい物件と真正面から同じ土俵で戦うのではなく、
古い物件でも「住みやすい」「使いやすい」と感じてもらえるポイントを増やすことが大切だからです。

物件の見せ方そのものを変え、3年かけて満室稼働へ

設備や運営の見直しだけでなく、物件の使い方そのものも調整しました。

単身者向けとして募集していた住戸の中には、ファミリータイプへ変更した方が需要に合う部屋もありました。
築年数が古い物件でも、間取りや使い方を見直すことで、今の地域需要に合った形へ変えていくことができます。

そして、こうした改善を一つひとつ積み重ねた結果、

この物件は3年かけて満室稼働まで回復しました。

ここは強調したいところですが、
3年かかった=時間がかかりすぎた
という話ではありません。
むしろ、築年数が古く、入居率40%まで落ち込んでいた物件を、無理な値下げや場当たり的な対策だけでなく、収支を見ながら着実に立て直していった結果としての3年だと思っています。

そして今では、一時的な満室ではなく、常に100%稼働を継続している状態になっています。


オーナー様に伝えたいこと


今回の事例を通して、オーナー様にお伝えしたいことがあります。

それは、
築年数が古いからといって、物件の可能性がなくなるわけではない
ということです。

もちろん、古い物件には不利な面があります。
ですが、だからこそ大切なのは、最初から諦めることではなく、
どこを知恵で変えられるか、どこにお金をかけるべきかを整理することです。

建物の資産価値を上げるためにお金を出すことは、とても重要です。
でも、その前に、

  • ※その部屋はどこまでのリフォームが必要か
  • ※募集の仕方を変えれば決まらないか
  • ※契約の組み方で収益化できないか
  • ※ターゲット変更で活きる部屋はないか
    といった、出せる知恵を出し尽くすことが先だと思っています。

そのうえで必要なお金を出す。
この順番で進める方が、今後の費用を抑えやすく、最終的な出口も見つけやすくなります。

管理は「待つ仕事」ではなく、「立て直す仕事」でもある


今回の事例は、タイトルの通り、まさに

管理はつらいよ
という一面を持った案件でした。

特に、築年数が古く、空室が多い物件を引き継ぐのは簡単ではありません。
数字だけを見ても厳しいし、オーナー様の気持ちも落ち込んでいることが多い。
そこからどう立て直すかを考えるのは、決して楽な仕事ではありません。

しかも、こうした物件は数か月で劇的に変わるものではなく、年単位で向き合う覚悟が必要になることもあります。
今回も、3年という時間をかけて、ようやく満室稼働を安定して維持できるところまで持っていくことができました。

ですが同時に、管理はただ見守るだけの仕事ではなく、
知恵を出し、物件の価値を立て直し、時間をかけて流れを変える仕事でもある
と改めて感じた案件でもありました。

「古いから仕方ない」
「空いているのが普通」
「今さら何をしても変わらない」

そう思われている築古物件でも、見方とやり方を変えれば、改善の道が見つかることがあります。