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相続した借地物件の処分

実録借地物件あれこれ

田中 康寛

筆者 田中 康寛

不動産キャリア25年

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相続した借地の空き家、「土地を返したい」から始まったご相談。

費用を抑えながらプラスで解決できた取引事例


 不動産のご相談の中でも、相続と借地が重なる案件は、特に複雑になりやすい傾向があります。
「どう動けばいいのかわからない」

「費用がどれくらいかかるのか不安」

「そもそも売れるのか、返すしかないのか判断できない」

――そのようなお悩みを抱えたまま、時間だけが過ぎてしまうケースも少なくありません。


今回は、都島区で弊社が管理している土地に建っていた、相続した借地上の空き家についてご相談いただいた事例をご紹介します。


ご相談者様から最初にいただいたお言葉は、とても率直なものでした。



「母親が亡くなったから土地を返したい。でも、できるだけ費用は抑えたいんです」


この一言の中に、相続案件特有の悩みが凝縮されていました。
相続した建物が借地上に建っている場合、単純に「いらないから返す」というわけにはいきません。建物をどうするのか、借地権はどう扱うのか、地主様との調整はどうするのか、相続登記はどう進めるのか。さらに、建物内に生活道具一式が残っているとなれば、片付けや処分の費用も現実的な問題としてのしかかってきます。

今回は、そのような状況の中で、更地返却ではなく建物の売却という方法をご提案し、最終的には費用を抑えるどころか、すべての手続きを終えたうえで収支がプラスになった事例です。


ご相談の背景|

所有しているだけで地代が掛かる負動産化することを危惧した「土地を返したい」が本音だった。


 今回の物件は、都島区内にある借地上の空き家でした。
 ご相談者様はお母様が亡くなられたことをきっかけに、この不動産を相続される立場となりましたが、ご本人としてはその不動産を活用する予定はなく、維持管理を続けることにも不安を抱えておられました。


 お電話でのお話では、まず次のようなお悩みがありました。


・相続したが、自分では使わない
・借地なので、いずれは土地を返したいと考えている
・手元に余裕資金がなく、できるだけ出費を抑えたい
・建物内には生活道具が一式残っている
・建物を解体して返すとなると、かなり費用がかかりそうで不安


 借地の空き家でよくあるご相談ですが、実際にはここから先の判断がとても重要です。
「返したいから解体して更地にする」という流れだけを考えてしまうと、解体費・残置物撤去費・各種手続費用が発生し、大きな持ち出しになることがあります。

しかし、不動産は一見すると難しそうな案件でも、見方を変えることで別の出口が見つかることがあります。
 今回も、単純に“返す”のではなく、売却できる可能性はないかという視点から検討を進めました。


※最初に行ったこと|借地だからこそ、条件確認が最優先

借地案件では、まず最初に確認しなければならないのが、契約条件や地主様との関係性です。
どれだけ建物が使えそうに見えても、借地権の譲渡に関する条件や承諾料、地代の状況が曖昧なままだと、買主様への提案もできません。


そこで、今回まず行ったのは以下の確認でした。


1. 譲渡承諾料と新地代の確認

借地上の建物を売却する場合、借地権の譲渡にあたり地主様の承諾が必要になるケースが多くあります。
その際に譲渡承諾料が発生するのか、新たな借主となる買主様に対して地代条件がどうなるのかを整理しなければなりません。

ここが不明確なままでは、売却の方向性そのものが定まりません。
逆に言えば、ここをきちんと押さえることで、売却できるかどうか、またどの程度の価格帯で検討できるかの土台ができます。

費用の見える化|解体だけが選択肢ではないことを数字で確認

次に行ったのは、もし更地返却を前提にするならどのくらい費用がかかるのか、また建物を生かす場合はどうなのかを比較するための見積もり取得です。


2. 解体見積もり、残置物撤去の見積もり
3. リフォーム見積もり

ご相談者様の一番の不安は「お金がない」ということでした。
だからこそ、感覚ではなく、まず数字で整理することが大切でした。

建物を解体して返す場合、当然ながら解体費用がかかります。さらに今回は室内に生活道具一式が残っていたため、残置物撤去費用も必要です。
相続した方にとっては、「片付けるだけでも大変なのに、そのうえ解体費も必要」となると、精神的にも大きな負担になります。

一方で、建物をそのままではなく、必要最低限の手入れをしたうえで利用価値を見出せる買主様がいれば、話は変わります。
その可能性を探るため、リフォームした場合の目安も確認しました。

この工程はとても重要です。
なぜなら、不動産の選択肢は「返すか、そのまま放置するか」ではなく、解体・売却・活用など複数の出口を比較したうえで判断するべきものだからです。

※売却できるのかを見極める査定|収益還元方式で価格を検討


次に進めたのが価格査定です。

4. 収益還元方式での価格査定

今回の物件は、一般的な自己居住用住宅としてだけでなく、収益物件的な見方もできる可能性がありました。
そのため、単に周辺の中古戸建相場だけを見るのではなく、利用方法を想定した収益還元方式も踏まえて価格を検討しました。

借地上の建物は、通常の所有権物件とは異なるため、価格の見方にも工夫が必要です。
相場だけを見て機械的に価格を出すのではなく、「どういう使われ方なら価値が出るのか」「どういう買主層に響くのか」を考えることが大切です。

不動産は、同じ物件でも見せ方や提案先によって評価が大きく変わることがあります。
今回も、最初から“古い借地の空き家”として消極的に見るのではなく、再活用の余地がある不動産として位置づけたことが、その後の結果につながりました。


売却活動開始|価格確定後に市場へ

条件整理、費用確認、査定まで完了した段階で、ようやく売却価格を確定し、販売を開始しました。

5. 売却価格確定後、売り出し

この時点で、ご相談者様にも各選択肢の差をご説明しました。

・更地返却の場合の想定費用
・残置物撤去を含めた持ち出し額
・売却できた場合の見込み
・手続き全体の流れ
・相続登記完了後に進めるべきこと

ご相談者様にとっては、「とにかく処分したい」というお気持ちが先にあったと思います。
ただ、そのお気持ちをそのまま急いで実行すると、結果として損をしてしまうこともあります。

だからこそ、私たちは単に売る・返すを勧めるのではなく、できるだけ損をしない方法を一緒に考えることを大事にしています。


相続登記完了後に引渡しへ|複雑な案件ほど段取りが大切

そして最後に必要となるのが法的な整理です。

6. 相続登記完了後、引き渡し

相続不動産は、当然ながら名義の整理が終わっていなければ、原則として売買を完了することはできません。
今回も、売却活動と並行して必要な確認を進めながら、最終的に相続登記を完了させ、引渡しまで進めました。

借地、相続、空き家、残置物――これだけ要素が重なると、どこか一つだけ対応すれば終わる話ではありません。
だからこそ、全体の流れを整理し、一つひとつ順番に進めることが重要になります。


最終結果|更地返却なら費用負担、でも売却で収支はプラスに

今回の最終的な結果として、物件は法人の寮として活用されることを前提に購入されることとなりました。
そのため、当初の収益還元方式による査定価格よりも高く売却することができました。

これは非常に大きなポイントです。
もし「借地だから難しい」「空き家だから解体しかない」と決めつけていたら、おそらく更地返却の方向で進み、解体費・撤去費などの持ち出しが発生していたはずです。

しかし今回は、建物の使い道を見出してくれる買主様とつながったことで、

・解体せずに済んだ
・残置物や手続きの整理も含めて出口が見つかった
・各種費用を払ってもなお収支がプラスになった

という結果になりました。


ご相談者様にとっては、単に「処分できた」だけではなく、最初に想定していたよりも良い形で問題を解決できたことが何より大きかったと思います。また、金銭面では所有権移転時に必要費用を支払うことで一時的にでも費用を手出しすることもなく売却代金で一気に精算出来たことも大きなメリットだったかと思います。


この事例でお伝えしたいこと|解決策は必ずある


今回の事例で一番お伝えしたいのは、解決策は必ずあるということです。

不動産のご相談では、最初にお話を伺った段階では「もう無理かもしれない」「費用がかかるだけでは」と思われていることが少なくありません。
特に相続、借地、空き家が重なると、難しい案件に見えるのは当然です。

ですが、そこで大切なのは、すぐに一つの方法に決めつけないことです。
返却、解体、売却、活用――それぞれを比較しながら、可能な限り損をしない方法を二人三脚で考えることが、納得できる解決につながります。

私たちは、単に不動産を売るためだけではなく、お客様の状況に合わせて「どうすれば一番良い形で整理できるか」を一緒に考えることを大切にしています。


借地だから難しい。
相続した空き家だから仕方ない。
お金がないから動けない。


そう思っている方でも、解決の道が見つかることはあります。
まずは現状を整理するところからでも大丈夫です。

都島区で相続不動産、借地、空き家のことでお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
“できるだけ損をしない解決策”を一緒に考えます。


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